山梨が全国に誇る伝統工芸品である一方、生活を送る上で誰もが一本は持っているハンコ。
山梨県の南に位置する市川三郷町は、古くからハンコに関係した印章業が発展してきました。
この地で40年近く彫刻師としての経験を持ち、日々、印章づくりを継承しつづけています。
印章づくりは、材料に直接筆で文字を入れる「字入れ」に始まり、印面を彫る「荒彫」、最後の「仕上げ」の3工程から構成されています。
「字入れをしっかりしないと、後の行程もだめになる」
字入れの作業で、左右逆さまの鏡文字を頭に思い浮かべながら直接書き込んでいく。時にはカタカナの左右が分からなくなることもあるそうです。(笑)
最近は機械で大量生産されたハンコも増えています。
『たくさん持つ物でないので、こだわりの一本を持ってもらえれば』
と、一本一本心を込め、使う人の気持ちを考えて彫刻し続けます。
「伝統工芸 甲州手彫印章」が仕上がるまで
1.字入れ
彫刻する文字を鏡文字(反対)で、印面に墨で書き入れます。書き終わったら、鏡に映して文字のバランスを確認します。
2.荒彫り
印面の朱の部分を彫っていきます。荒彫刀は太いものから細かいものまで6本ほどあり、彫る部分によって使いわけます。
現在は、手作業による自動彫刻機彫りを行っています。
3.仕上げ
紙やすりで印面を整え、墨打ちして文字の太さやバランスなどを仕上げ刀で整えます。
4.試し押印
仕上がった印面にコルクで叩くように朱肉を付け、鏡で印面を確認し、たけのこ皮の台で専用和紙に押印して仕上がりを確認します。